あれは、
わたしがまだ二十代のころの話です。
(😅遠い昔じゃ)
東京23区外のとある大きな公園の近くに住んでいました。
公園の緑の木々と弁天堂があり、
周囲はまあまあ高級住宅街といったところでした。
わたしは!といえば、
住んでいたアパートは、
そんな環境とは似つかず、
ひとつポツンとあった小さなアパート。
風呂無し二間で、
確かひと月五万円もいかない部屋でした。
その頃はちょうどアルバイトを探していて、
けっこう暇を持て余していたわたし。
季節は秋、
公園の木々の紅葉が🍁美しくて、
朝公園へ通い、スケッチブックと固形の水彩絵具を持って、
絵を描きに行っていました。

公園の自販機で紙コップで注がれるコーヒーを一杯買って、
それを飲みながら絵の構想を考えて、
飲み終えた紙コップを洗面所で洗って、
水彩絵具に使う水入れに紙コップを使いました。
美しい秋の紅葉を見ながら、
清々しい気持ちで絵筆を走らせていると、
ゴミ収集車が来ているわけではないのに、
カラスがいっぱい公園にやって来ていました。
はじめは気にもとめてはいなかったんですが、
ふと背後から声がしました。
「あのぉ、カラスお好きなんですか?」
わたしの目の前にカラスが一羽近くで止まっていたんですが、追い払うこともしないでいたのでした。
しかし、背後の声は誰でしょうか?
近所に知り合いもいないので、
ふと振り返ると、

肩や腕に何匹もカラスをとまらせている年齢不詳な男…いやいや、
年齢だけじゃなくて、
世にも不思議な光景を背をった男が立っていました。
けっこうなズタボロの服装だけれど、
ボロボロ具合やカラスの取り巻きを抜かせば、
けっこうなイケメン男でした。(おしい💧)
わたしは言葉を失って、
ボーツと男とカラスに見とれていました。
男はまた、
「カラスっていいですよね」
なんてわたしに話しかけます。

カラスは嫌いじゃないけれどね。あははは 苦笑
あれから何十年も経ちますが、
かわいいフトバシカラスを見るたびに、
あのカラスの男を思い出します。
妙な条件反射。